部屋にたゆたうトロイメライ。
あたしはベッドでそれを聞く。


「れい、上手くなったね」


ちらりとこちらを見る気配がした。
あたしはピアノが弾けない。
同じく鍵盤の上を優雅に歩けるおねえちゃんの指が
ゆっくりとあたしの髪を梳く。



ああ、眠いな。



れいのピアノも
おねえちゃんの指先も

気持ちいいから眠くなる。



「セーラー服がしわになってしまうわ」
「うん」



耳にふわりとかけられた髪がくすぐったくて
でも動きたくないから放っておいた。

そしたら首がぶるりと震えて
猫みたい、とおねえちゃんが笑った。

あたしは猫じゃないよ、
それもそうねとまた笑う。
あたしだけ猫じゃないよ、
それはそうだわ、また笑う。



目を開けたら二人が猫になってて、
あたしだけ取り残されたら、
あたしだけ置いてかれたら、
それはすごく、



「嫌だなぁ」



ピアノの音が止まる。
髪の上の指も止まる。



「ああ、なんでもない」



変なの、れいが言って、おねえちゃんも言って
また流れるトロイメライ。



悲しい言葉を口にしてしまえば
この心地いい時間は止まってしまうんだ
だからあたしは何も言わない


おいてかないで、


なんて
言えるはずもない








あたしだけおいてかないで
あたしだけおいてかないで
死なないで傍にいてずっと
こうしていてよお願いだか
らおいてかないでおいてか
ないでお願いだからおいて
かないで傍にいてねぇねぇ








あたしの心地いい時間は二人の指先によって作られるのです。





















 絆が中学生。











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