「私は君とは違う」 侮蔑を込めて吐き出した言葉は、むかつくくらい優しい顔に受け止められた。 「君は死ぬことを受け入れているように見えて、本当は人一倍それを恐れている。 違うか?」 琥珀色の目が笑う。笑う。笑う。 「何故、笑う。恐れろ。恐れているならば、わめけばいい。泣けばいい。 何かに縋りつけばいい。違うか?」 頬に伸ばされかけた手を反射的に振り払った。 その人は一瞬傷ついたような顔をしたが、またあの力の抜けたような柔和な表情に戻って、そして、軽く俯いた。 「……何故、君は……」 ぽたり、と地面に水滴が落ち、黒く染みて消えていった。 果たしてそれは、私の涙であった。 「ごめんな」 その人はもう一度私の頬に手を伸ばした。 振り払う気力もなく、熱い手のひらが頬に張りつくのをただぼうっと感じていた。 私の頬と彼の手のひらの間を、また一つ涙がすべる。 「ありがとう」 やめてくれ。何故そこまで自分の価値を自分で下げていくんだ、君は。 もっと過大評価すべきだ。 君は優しい。 君は私よりずっと大人だ。 君は強い。 弱みを見せようとしない君は、強い。 君は、優しい。 「やめてくれ……」 「頼む、から」 「やめて、やめて……」 ああ、まっすぐに君を見れない。 それでも笑っているのだろう、わかるんだ。 だって君は、優しい。 「ごめんな。ありがとう」 わめけ。泣け。縋りつけ。 それは彼が私に対して取って欲しい行動だったのだと 今更ながらに気づいた自分の愚かさを、私は呪った。