傘忘れたの?
「だーかーらー! それ俺のだって言ってるだろ!?」 「やったんのですー!」 灰色の空の下、制服姿の知人友人達の背中が遠ざかっていく。 ……のが見える昇降口で、声高になにやら言い争っている少年と少女。 二人が握っているのがお互いの手や腕なんかだったりしたら。もしくは何かの証書だったりなんかしたら。 そこに一つのドラマ性が伺えるであろうが、冒頭のセリフから考えるとホラーでしかないし、年齢的に後者も考えづらい。 実際二人が何をつかみ合っていたかというと、一本の半透明なビニール傘であった。 「だって見覚えあるんだもんこのシール剥がした跡さぁ!」 「違いますお気に入りの傘を忘れたやったんが途中コンビニでしぶしぶ買った奴です!」 雷は空に走るだろうか、二人の間に走るだろうか。 雲行きはかなりあやしい。 「もういいじゃん午後は雨降らないっていうし、諦めれば」 「一本の傘にも五分の魂」 「意味わかんねぇし」 「これはやったんがお財布を痛めて買ったものです。そう簡単に人へは渡せません」 「だから財布を痛めてこれを購入したのは俺だって言ってるだろー!?」 頭と足をつかまれ引かれ、傘がぎしぎしと音を立てる。 ここまでくると傘のことよりももう意地である。 「……離すですよ」 「……そっちこそな」 その意地が張っているものだからお互い後にひけなくなっている。 もう何度目になるだろうか。非難の声をあげるべく二人が口を開くより先に、玄関先で歓声があがった。 「空!虹!」 その言葉に弾かれるように外を見る。 うっすらと頼りない光りの帯を遠くの空に認めると、二人は顔を見合わせて外へと駆け出した。 虹の下の校門で二人を待っていた(と、いうより待たされていたという方が正しい)少女は 近づいて来たその姿にため息を漏らした。 「なんや……結局あの傘置いてきはったん……あんだけ仰々しく騒いでおいて」 「あ」 「……忘れてきたんですか」 振り出しに戻る。


 血華ちゃんはつっこみもぼけもいけると
 そう信じてやまない今日この頃(嫌すぎ)

 この二人の喧嘩はなんかお子様だといい。














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